2008.2.18

朝、目を覚ますと、窓の外はまだ暗かった。

電光掲示板を見ると、次の停車駅の表示は「那曲」となっている。地図で確認すると、検問があるという噂を聞いていた「格爾」という町は、とっくに通り過ぎていた。すでに、チベット高原に入っている。あとは、(あるのかどうか定かじゃないけれど)ラサ駅でのチェックさえ素通りできれば、ついに目的地だ。時計を確認すると、今の時刻は8:00。にしては、暗いよなあ。山があるから、日の出が遅いのか、この列車が時刻の補正をしていないか。或いは、中国国内では共通の時刻を採用しているのかもしれない。*1
もう、ここまで来ると、乗客は大分少なくなっていて。窓際の通路の補助席に座っている人も、まばらだった。時々通路を通りかかる人の中には、漢民族とは明らかに顔つきの異なる、チベタンらしき人も見かけるようになった。
補助席を出して、まだ薄暗い外の景色を眺めながら朝ごはんを済ませる。といってもカップラーメンだけれど。(いい加減飽きてきた)(ついでに言えば、列車にもウンザリしてきた) 外の景色はもう、まさにチベット高原って感じで。荒涼とした山や谷ばかり。途中で見た湖は、半分凍っていた。再び電光掲示板をチェックすると、高度は4700m。最高点の5000mに近いけれど、未だ高山病の症状は出てなかった。幸運にも高山病にかからない体質らしい。
外が少しづつ明るくなってきた。補助席に座る人も、少しづつ増えてくる。ここまできて、公安に目を付けられるのは流石に御免なので、到着まで寝台で大人しくしていることにした。







ラサ駅に到着したのは、もう夜遅くだった。結局、何のチェックもないまま、駅を出ることができた。ついに来たぞ、チベット! しかし、楽々と目当てのチケットが買えたことといい、チェックに一つも引っかからなかったことといい、高山病に罹らなかったことといい。滅茶苦茶ラッキー。
旅行人*2からコピーしてきたページによれば、市内に出たかったら91号のバスに乗ればいいらしい……んだけれど、この時間では流石にもうバスは運行していないらしくって。駅のロータリーにタクシーが何台も停まっていて、運転手が客引きをしていた。チベタンの運転手を見つけたので、彼の客引きに捉まったフリをして交渉開始。あらかじめネットで聞いていた価格よりも、大分安い。結局、ヤクホテル*3まで、20元で落ち着いた。乗り合いタクシーなので、他の客を捉まえてくると、運転手のおじさんは走って行った。
とりあえず60時間ぶりに一服でもするか、と煙草を咥え、ライターで火を点け…ん? あれ、点かない。壊れたかな、とマッチを取り出して擦ると…あれ? これも点かない…。火が点く時の音はして、リンの部分も確かに酸化しているのに、肝心の炎は上がらない。…あ、そうか。ここの標高は、3700mなんだった。富士山より高い。酸素も当然、大分薄い。多分、このライターもマッチも、この酸素濃度を想定して作られてないんだろうね。こんなところで、とんでもない高地にいることを実感した。
そうこうしているうちに、運転手のおじさんが客を3人連れて戻ってきて、出発。30分くらいで、ヤクホテルのまん前まで送ってくれた。



無事チェックインして、2日ぶりのシャワーを浴びた。サッパリ。今日はもう遅いから、寝ることにした。

*1:後に聞いた話によると、どうやら統一時刻が正解らしい

*2:バックパッカー向けのガイドブック

*3:ラサ市内にある、パッカー向けの安宿の一つ…かと思いきや、実際泊まってみると結構良さげな、ちゃんとしたホテルだった